「エアコンの効きが悪くなったので見てもらったら、ガスが減ってました」ってお客様から聞くこと、実はけっこう多いんです。でもこの「ガス」の話、ちゃんと理解されてる方は少ないなと感じてまして。今日はこのあたり、現場目線で深掘りしてみようと思います。
そもそもエアコンの中で「ガス」は何をしているのか
エアコンの中には冷媒というガスが入っていて、これが室内機と室外機の間をぐるぐる循環しながら、部屋の熱を外に運び出す仕事をしています。冷房のときは室内機側で冷媒が気化して周りの熱を奪い、その熱を室外機まで運んで外の空気に逃がす、というのを延々と繰り返しているイメージです。ポンプで水をくみ上げるのと同じで、循環する量が減ると当然運べる熱の量も減ります。
ここで大事なのは、冷媒は基本的に「使ったら減っていくもの」ではないという点です。ガソリンみたいに燃焼して消費されるわけではなく、密閉された配管の中をずっと同じ量が回り続けるのが本来の姿。つまり、正常な状態なら何年使ってもガスの量はほとんど変わらないはずなんです。
ちなみに今のエアコンのほとんどはR32という冷媒が使われていて、以前主流だったR410Aより地球温暖化への影響が小さいと言われています。品番シートや室外機の銘板に型式が書いてあることが多いので、気になる方は見てみると面白いかもしれません。ただ、種類が違うと工具や充填量の管理も変わってくるので、ここは無理に自分で調べようとせず、点検のときに聞いてもらうのが一番確実だと思います。
「効きが悪い=ガス不足」と決めつけると見誤りやすい
実際に現場で点検すると、ガスが原因じゃないケースの方が多いくらいです。フィルターにホコリが詰まって風量が落ちているだけとか、室外機の吹き出し口の前に物が置かれていて熱をうまく逃がせていないとか、原因は本当にいろいろあります。以前このブログでも室外機まわりの話を書きましたが、あれも同じ理由で効きに直結する話でした。
もう一つ意外と多いのが、室内機の中にある熱交換器という金属フィンの部分にホコリやヤニ、油分がびっしり付着しているパターンです。フィルターは掃除していても、その奥のフィンまでは掃除しきれていないご家庭が結構あって、ここが目詰まりすると熱交換の効率がガクッと落ちます。見た目には気づきにくい場所なので、フィルター掃除だけで満足してしまいがちなんですが、実は一番効きに影響する部分だったりします。
もう一つ見落とされがちなのが「経年劣化による能力低下」です。10年以上使っている機種だと、圧縮機自体の性能が少しずつ落ちてきて、ガスの量には問題がなくても以前ほどキンキンに冷えなくなることがあります。この場合はガスを足しても意味がないので、まずは原因の切り分けが肝心なんですよね。
なので僕らが点検に伺うときは、まずフィルターと室外機周りを見て、それでも説明がつかない効きの悪さのときに初めて冷媒の量を疑う、という順番で見るようにしています。いきなり「じゃあガス補充しますね」とはならないんです。
ガスが減っているなら、それは「漏れている」というサイン
先ほど書いた通り、正常なら冷媒は減らないものなので、量が足りていないということは配管のどこかに小さな穴や継ぎ目の緩みがあって、そこからじわじわ漏れ出している可能性が高いんです。この状態でガスだけ補充すると、一時的には効きが戻るんですが、漏れている箇所はそのままなので、また数ヶ月から1年くらいでじわじわ減っていって同じ症状が出る、というのがよくあるパターンです。
お客様の中には「毎年夏前にガス補充だけお願いしてます」という方もいらっしゃるんですが、正直それはあまりおすすめしていません。漏れ箇所を特定して修理しないと根本解決にならないですし、冷媒はフロン類なので、大気中に漏れ出すこと自体があまり好ましくないと言われています。補充を繰り返すより、一度きちんと漏れ箇所を探して直す方が、長い目で見ると出費も手間も少なく済むことが多いんです。
漏れ箇所として実際に多いのは、室内機と室外機をつなぐ配管の接続部分(フレア加工と呼ばれる部分)や、配管そのものが壁の外に出る際にこすれて傷ついている箇所です。特に配管が屋外に露出している設置だと、経年で被覆が劣化して細かい穴が開くこともあります。ガス補充だけを毎年繰り返している場合、費用感としても「補充代」が積み重なっていくより、一度漏れ箇所の修理まで含めて対応した方がトータルで安く済むケースが多い印象です。
現場ではどうやって「ちゃんと直った」を確認しているか
修理のときは、漏れ箇所を塞いだあとに真空引きという作業をして、配管内の空気や水分をしっかり抜いてから新しく冷媒を規定量入れ直します。この真空引きも以前ブログで触れましたが、圧力計の数値をちゃんと確認しながら進めるかどうかで、その後の耐久性がかなり変わってくる工程です。ここを省略して「とりあえずガスだけ入れて終わり」にしてしまう業者さんもゼロではないと聞くので、作業内容を聞いてみるのも一つの目安になると思います。
もしご自宅のエアコンで「去年より効きが弱い気がする」「去年も同じ時期に補充してもらった」という心当たりがあれば、それは単発のガス補充より一度しっかり点検してもらうタイミングかもしれません。早めに見てもらえば、漏れが軽いうちに直せて修理範囲も小さく済むことが多いです。
ちなみに冷媒の充填作業自体、フロン類を扱う専門の資格や設備が必要な作業なので、一般の方がご自身で足すことはできません。「近所の電気屋さんでガスだけ入れてもらった」というケースでも、本来はきちんとした診断とセットであるべき作業だと思っています。目安としては、極端な症状がなくても3〜5年に一度くらいは室外機周りも含めた点検を受けておくと、小さな異常のうちに見つけやすくなると思います。
ガスの話は目に見えないぶん分かりにくいと思うんですが、仕組みを知っておくと「今うちのエアコンに何が起きてるのか」が想像しやすくなるはずです。気になる症状があれば、遠慮なく聞いてくださいね。
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