朝礼で、現場の話の前に「運転の話」をするようになった話

朝礼で、現場の話の前に「運転の話」をするようになった話

うちの朝礼は、だいたい前日の現場の報告から始まるんですけど、最近ひとつ変えたことがあるんです。現場の段取りの話に入る前に、「今日の運転の話」を少しだけ入れるようにしました。

きっかけは、若いスタッフが「現場に着くまでが一番緊張する」と漏らしたことでした。聞けば、工具や材料を積んだ車で朝の幹線道路を走るのが、いまだに怖いんだそうです。私も現場が長いので、正直「運転は慣れ」くらいに思っていたところがあって、そのひと言でハッとしたんですよね。

考えてみれば、現場に向かう車って、乗っている人の手元が一番いろいろ動く時間なんです。ナビを見る、無線に返事をする、図面を確認する。そこに寝不足や朝の焦りが重なると、いつもは気にしない小さな段差や割り込みに、ふっと気持ちを持っていかれる。そういう状態で運転している自覚を、まず全員で持ちたいと思ったのが始まりでした。

そこで朝礼のあとに決めたのが、出発前の“三つの確認”です。シートとミラーの位置を合わせること、スマホは走り出す前にナビだけ決めておくこと、そして予定の時間より少し早く出ること。どれも当たり前のことなんですけど、当たり前を毎朝言葉にするのが意外と大事なんだと感じています。

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「慣れた道」ほど、見ていないものがある

うちの車は毎日のように同じ道を走っています。八王子の市内でも、ここは信号が長い、ここは左から車が出てくる、という“地図”が頭に入っていますよね。ただ、その安心感が一番の落とし穴なんだと思うんです。

実際、現場に向かう途中でヒヤリとしたことを振り返ると、ほとんどが「いつもの道」「いつもの交差点」で起きています。知らない道では慎重になるのに、慣れた道では目が前の車だけに向いて、歩道の自転車や、路肩からゆっくり出てくる軽トラが見えていない。これは運転が下手とかの話ではなく、人の注意がそういうふうにできている、という話なんだと思います。

だから朝礼では、「今日はどこの交差点が一番気になるか」を一人ずつ言ってもらうようにしています。答えは「あそこの右折がいつも長い」「雨の日の坂道は車間が詰まる」など、何でもいいんです。言葉にすると、人は少しだけ見る場所を自分で決められるようになる気がします。

朝の数十秒の話し合いで、事故がゼロになるわけではありません。ただ、「あそこは気をつけよう」と思っている人が一人でも多い車と、誰も何も考えずに出発する車とでは、ハンドルを握ったときの余裕がまるで違うと思うんです。

それと、ヒヤリとした出来事は「怒られるネタ」にしないようにしています。誰かが「あの角で急に人が出てきてびっくりした」と言ったら、それを責めるんじゃなくて、どこで何に気づけたかを一緒に考える。失敗談を出しやすい空気がないと、本当に危ないことほど表に出てこないんですよね。

積み荷と工具は、走り出す前に固定する

もうひとつ、朝礼で必ず触れるのが積み荷の話です。工事の現場は、室外機や配管材、工具箱、脚立など、重さも形もバラバラのものを車に積みますよね。走り出した瞬間に、それが後ろから前へ滑ってくる、というのは本当にあり得ることなんです。

ここでのコツは、「積んだら一回、車の外から見て回る」ことです。ドアを閉める前に、ベルトやロープがちゃんと締まっているか、工具箱のフタがきちんと閉まっているかを確認する。大げさに聞こえるかもしれませんが、ブレーキを踏んだときに何がどこへ飛んでくるかを想像するだけで、ずいぶん違うと思います。

特にありがちなのが、「現場で一度降ろしたから、帰りは適当でいいか」というパターンです。帰りの車は、疲れて気が抜けている時間でもあるので、積み直すときこそ同じ手順を踏むのが大事だと私は思っています。

もうひとつ地味に効くのが、車内の整理です。ケーブルの切れ端やビニールの袋が足元に転がっていると、ブレーキのときに足が引っかかったり、視線が下に逸れたりします。毎日の終わりに十分だけ片付けるだけで、翌朝の運転がずいぶん落ち着くものです。

お客様のお宅の前も、工事の一部だと思っている

最後に、これは私自身がずっと気にしていることなんですが、工事車両はお客様のお宅の前に停まる時間が長いんです。作業中に人が出入りし、道具が出て、ご近所の方が通る。車の停め方や、エンジンのかけっぱなし、道をふさがない位置取りなど、そういう細かいところがお客様の印象にそのまま残るんですよね。

うちの会社では、車を降りたらまず周りを一度見て、通行の邪魔になっていないかを確かめるようにしています。エアコンの取り付けは、室内の作業だけで完結するものじゃない。玄関や駐車場から始まって、帰るときに車を出すところまでがお仕事だと、私は思っています。

お客様の立場で見ると、作業の腕前と同じくらい「この会社の人は、外でもちゃんとしているな」と感じてもらえるかどうかが大事なのかもしれません。そこまで含めて現場なんだと、若いスタッフにも話すようにしています。

具体的には、ご近所の方が通るときは一度立ち止まって会釈する、資材を置くときは歩行者の動線をふさがない、作業後は敷地の中を一度ぐるっと見回して忘れ物やゴミがないかを確認する。どれも教科書には載っていないような話ですが、お客様が「また頼もうかな」と思ってくださる理由は、案外こういう細かい場面にあるんじゃないかと思っています。

結局、朝礼で「運転の話」をするようになって一番変わったのは、現場に着く前から、みんなの顔が少しだけ引き締まったことでした。大きな変化じゃないですけど、こういう小さな積み重ねが、事故のない一年につながるんだと信じています。


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