月末にたまっているアンケートの返信をまとめて読む、というのを最近の習慣にしているんですけど、先日その中の1枚で手が止まりました。「対応がすごく丁寧だった」とか「説明がわかりやすかった」みたいな嬉しい言葉はもちろんあるんですが、その日は違う種類の一文が目に入ったんです。今日はその話をちょっとさせてください。
「また頼みたいと思えるかどうか」が書かれていた
そのアンケートには、工事の満足度とは別に「次も頼みたいと思いますか」という欄がありました。そこに「正直、他の業者さんと比べたことはないですけど、次もお願いしたいです」と書かれていたんです。比較せずに選び続けてもらえる、というのは、営業として見れば少し心配な数字かもしれません。でも経営者としては、これが一番ありがたい言葉だなと思いました。アンケートには「満足度」を5段階で答える欄もあるんですが、正直そっちの数字だけ見ていた時期は、高評価が並んでいても「本当にそう思ってくれてるのかな」とどこか半信半疑なところがありました。自由記入欄の生の言葉を読むようになってから、ようやく数字の裏側が見えてきた気がしています。
うちは価格の安さで勝負している会社ではないと自分では思っています。だからこそ「比較しても選ばれる」より「比較する気にもならないくらい信頼されている」方が、本当は目指したい状態なんですよね。その一文を読んで、ふだんの小さい積み重ねが、ちゃんとどこかに届いているんだなと実感しました。技術の差とか工事のスピードとか、数字で比べられる部分で勝とうとするのも大事ですが、結局は「この人たちになら任せられる」という感覚を積み重ねることの方が、長い目で見たら強いんだろうなと改めて思っています。
現場のスタッフの名前が書かれていたこと
もうひとつ印象的だったのが、担当した若手スタッフの名前を、わざわざお客様が手書きで書いてくれていたことです。「〇〇さんがとても丁寧で、子どもにも優しく接してくれました」という内容でした。会社としての評価じゃなくて、個人の名前が出てくるアンケートって、実はそんなに多くありません。
その若手は、まだ入社して1年ちょっとで、現場では先輩に教わりながら動いているような段階です。それでもお客様から名前付きで褒めてもらえたというのは、本人にとっても、見ている自分たちにとっても、ちょっとした自信になる出来事だと思います。すぐに本人にコピーを渡して、「ちゃんと伝わってるぞ」と言葉を添えました。本人は最初、照れくさそうにしていましたが、少し経ってから「あのお客様の家、また行くことになったら嬉しいですね」とぽつりと言っていたのが印象に残っています。技術的な評価は先輩や検査でしっかり見ていきますが、お客様からの「人としての評価」は、本人の中で全然違う種類の自信になるんだと思います。こういう言葉は、こちらが何度口で伝えるよりも効くものがあります。
厳しい意見のほうが、実は長く覚えている
一方で、アンケートには厳しい意見が書かれることもあります。「説明の順番が分かりにくかった」とか「もう少し早く来てほしかった」といった内容です。正直、読んだ瞬間は少し凹みます。でも振り返ってみると、こういう厳しい一文のほうが、何年経ってもふとした瞬間に思い出すんですよね。良い評価はもちろん嬉しいけれど、会社を変えてくれるのはいつも厳しい方の言葉だったりします。
以前、「見積もりの説明が長くて何が大事なのか分からなかった」という一言をもらったことがあって、それがきっかけで今の見積もりシートの構成を変えました。今では最初に結論(金額と工事内容)を伝えてから詳細を説明する順番に変えています。あのときの一文がなければ、今のやり方にはなっていなかったと思います。もっと言えば、見積もりだけでなく、工事前の説明の仕方や、工事後の片付けの仕方まで、厳しい意見をもらうたびに少しずつ手直ししてきた結果が今のうちの形になっています。社内のマニュアルを作るときも、「褒められたこと」より「指摘されたこと」の方を優先的に反映するようにしています。
アンケートを「集計」から「会話」に変えたい
これまでアンケートは、どちらかというと数字としての満足度を見るためのものだと思っていました。でも最近は、一枚一枚のコメントを「お客様との会話の続き」として読むようにしています。返信を書く欄に全部答えられるわけではないですが、次に同じお客様とお会いしたときに、さりげなくそのときの話を覚えていて伝える、ということを意識しています。
アンケートに答えてくださること自体、別にやらなくてもいいお客様の手間です。それでも書いてくれるというのは、こちらへの小さな期待の表れなんだと思っています。特に高齢のお客様など、わざわざ便箋に手書きで感想を書いて同封してくださる方もいて、そういうものを受け取ると、こちらも気が抜けないなと身が引き締まります。
来月からは、アンケートの項目を少し見直して、「次に工事で困ったことがあったら、またうちに連絡したいと思うか」という欄を新しく加えてみようと思っています。満足度の点数よりも、そっちの方がよっぽど正直な評価になる気がしているからです。こうやって少しずつ聞き方を変えながら、お客様の本当の声に近づいていきたいですね。これからも、良い言葉にも厳しい言葉にも、ちゃんと向き合っていきたいと思っています。
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