「いやあ、助かりました。ありがとうございます」。工事が終わって、お客様からそう声をかけられた時、職人のみんなはどんな顔をしてますか。僕は会社の名前で仕事をしてもらっている以上、現場であったそういう一言をよく聞くんですけど、受け取り方って人それぞれだなと感じるんです。今日はそのへんの話をしてみようと思います。
「当たり前の仕事」をしただけ、で片付けていませんか
長くこの仕事をやっていると、エアコンをちゃんと取り付けるのも、配管をきれいに通すのも、自分の中では「当たり前」になってくるんですよね。だから褒められても「いや、普通にやっただけです」って軽く流してしまう職人さん、結構多いと思うんです。謙虚なのは悪いことじゃないんですけど、お客様からすると、その「当たり前」を支えてるのが何年もの経験と手間だって分かってないことが多いんです。
実際、僕らのところに「前に来てくれた職人さんが丁寧で、また同じ人にお願いしたい」っていう声が来ることがあるんです。お客様は工法の細かい違いなんて分からなくても、仕上がりの揃い方とか、後片付けの綺麗さとか、説明の分かりやすさとかで、ちゃんと「この人は丁寧にやってくれた」って感じ取ってるんですよね。当たり前にやってることが、実はお客様にとっては当たり前じゃないんです。
褒め言葉を「次の仕事」に変えてる職人の共通点
僕が見てきた中で、長く安定して仕事が入ってくる職人さんって、お客様からの一言をちゃんと受け止めて、それを次に繋げてるなと思うんです。例えば「ここ、分かりやすく教えてもらえて良かった」って言われたら、それをきっかけに次の現場でも同じように説明を丁寧にする。逆に何も言われなかった現場があったら、何が違ったのか、自分の中で振り返ってみる。褒め言葉も静かな現場も、どっちも次への材料にしてるんですよね。
反対に、お客様の反応をまるごと無視して「仕事は仕事、終わればそれでいい」って割り切ってしまうと、せっかくの評価が次の仕事に繋がらないまま終わってしまうことも多い気がします。協力業者としてうちから仕事をお願いしている職人さんの中にも、現場での評判が良くて「またこの人にお願いしたい」とリピートで声がかかる人がいます。その差は、技術だけじゃなくて、お客様の反応をちゃんと受け止めてるかどうかにもあるんじゃないかなと思うんです。
褒められるのが苦手な職人さんへ
一方で、褒められるのがどうも苦手で、「いえ、別に」みたいに短く返してしまう職人さんもいます。これも悪いことじゃないんですけど、お客様からすると、せっかく感謝を伝えたのに素っ気なく返されると、ちょっと寂しい気持ちになることもあるみたいなんです。かしこまった返事をしなくていいので、「ありがとうございます、丁寧にやらせてもらいました」くらいの一言だけでも、お客様の印象はだいぶ変わると思うんですよね。
これは接客業みたいに振る舞えって話じゃなくて、素直に受け取るだけでいいんです。現場での口数が少ない職人さんでも、工事の最後に一言「気になるところがあれば言ってくださいね」って添えるだけで、お客様は安心して感謝を言葉にしやすくなります。言葉のキャッチボールが一回あるだけで、次に繋がる確率はぐっと上がるものだと僕は思っています。
一人で受けた感謝を、仲間と共有する意味
こういう「ありがとう」の話って、一人親方で現場に出てる人ほど、自分の中だけで終わらせがちなんですよね。誰かに話す機会もないし、日報に書くわけでもないし。でも、職人PRIDE(プライド)みたいなコミュニティで、そういう現場の小さな手応えを他の職人仲間と話せる場があると、自分がやってきたことの意味を改めて感じられることがあると思うんです。
うちで協力業者として動いてくれている職人さんたちの話を聞く時も、お客様からの感謝の言葉を嬉しそうに話してくれる人は、仕事へのモチベーションも安定してる印象があります。職人プライドというコミュニティを通じて、そういう現場での手応えを共有できる場を少しずつ広げていけたらいいなと、僕は思っています。一人で黙々とやる仕事だからこそ、たまには誰かとその成果を分かち合う時間も大事なんじゃないかなと。
感謝が「次の指名」に化けるまでの時間差
ここで一つ知っておいてほしいのは、現場でもらった「ありがとう」がすぐに次の仕事に繋がるわけじゃないということです。お客様の多くは、工事の直後は満足していても、実際にまた誰かに頼む機会が来るのは半年後、一年後、それこそリフォームのタイミングまで何年も空くこともあります。だから「褒められたのに次の依頼が来ない」と感じても、それは評価されなかったからじゃなくて、単に次の出番がまだ来ていないだけ、ということも多いんです。
うちに「前にお願いした人にまた来てほしい」という指名の連絡が入るのは、工事から数年経ってからというケースも珍しくありません。その時にお客様が覚えているのは、技術の細かい話じゃなくて、「あの時、気持ちよく対応してくれた」という印象だけだったりします。つまり、現場での一つひとつの対応は、すぐに結果が出なくても、お客様の記憶の中にちゃんと積み重なっているということなんですよね。目先の評価だけで一喜一憂しなくていい、というのはそういう理由もあります。
現場での「ありがとう」の一言、聞き流さずにちゃんと受け止めてみてください。それがきっと、次の仕事にも、自分自身のやる気にも繋がっていくと思います。

