工具代とか材料費の話をすると、みなさん「経費で落とせるから」で終わらせがちなんですけど、僕はそれちょっともったいないと思ってるんです。経費うんぬんの前に、そのお金の使い方が自分の仕事にとって「得」なのかどうか、そこを見た方がいいんじゃないかなと。今日はそんな、職人さんならではのお金の感覚について書いてみます。
工具は「経費」じゃなくて「投資」で選ぶ
安い工具を買って数ヶ月で壊れて、また同じの買い直して……というのを繰り返してる人、意外と多い気がします。もちろん現場によっては使い捨て感覚でいい道具もありますけど、毎日手にする主力の工具に関しては、多少高くても長く使えるものを選んだ方が結局は得だと思うんですよね。壊れて現場が止まる方が、よっぽど痛い出費になりますから。
逆に言うと、全部いいものを揃える必要もなくて、「これは毎日使うから投資」「これはたまにしか使わないから安いのでいい」って線引きを自分の中で持っておくのが大事なんじゃないかなと。この感覚って教えてもらう機会があんまりないから、若い職人さんは特に、先輩の道具選びを見て学ぶことが多いと思います。
あと、道具にかけたお金って、壊れて買い替えた瞬間だけじゃなくて、普段のメンテナンスにもちゃんと表れてくるものだと思うんです。刃を研ぐ、油を差す、バッテリーを正しく充電する、そういう地味な手間を惜しまない人ほど、結果的に道具にかける総額は安く済んでいたりします。目先の値段だけじゃなくて、使い終わるまでのトータルで考えるクセをつけておくと、道具選びの基準がぶれなくなると思います。
原価をちゃんと把握すると、見積もりの精度が変わる
材料費、工具の消耗費、ガソリン代、駐車場代……こういう細かいものを「まあ、なんとなく」で見積もりに乗せてる人、実はけっこういるんじゃないかと思います。でも一件一件ちゃんと原価を計算する癖をつけると、どの仕事が本当に儲かってるのか、どの仕事が実は赤字スレスレなのか、はっきり見えてくるんです。
特に一人親方の場合、自分の手間賃と経費の境目があいまいになりがちなので、意識して分けて考える必要があると思っています。「この現場は移動時間が長いから、その分もちゃんと乗せよう」みたいな判断ができるようになると、同じ仕事量でも手元に残るお金が変わってくるはずです。面倒でも、月に一度でいいから自分の数字と向き合う時間を作ってみてほしいなと思います。
特に単価が長年変わっていない仕事ほど要注意で、材料費が上がっている分をそのまま自分が被ってしまっているケースも少なくないと言われています。付き合いのある元請けさんだからと遠慮せず、原価が上がった分はきちんと相談してみる、それも一人親方としての大事な仕事のうちだと僕は思います。
稼いだお金を守る備えも、少しずつでいいから
体が資本の仕事なので、ケガや体調不良で動けなくなったときの備えは、後回しにされがちだけど本当に大事なところだと思います。労災の特別加入制度や、一人親方向けの共済・保険なんかは、内容を一度きちんと確認しておくといいと言われています。いざという時に「入っておけばよかった」となるのが一番もったいないので。
あとは、確定申告の時期になって慌てて領収書を集めるんじゃなくて、日頃から現場ごとにざっくりでも記録をつけておくクセをつけておくと、申告も楽になりますし、自分の経営状態も見えやすくなります。難しく考えなくて大丈夫で、まずは家計簿感覚の延長でいいと思うんです。
将来、体力的にきつくなってきたときのために、少しずつでも積み立てておく、道具や車の買い替えに備えて別口座に分けておく、そういう小さな仕組みを作っておくだけでも気持ちの余裕がだいぶ違ってくると思います。全部を完璧にやろうとしなくていいので、まずはひとつだけ、今日から始められそうなことを決めてみてほしいなと思います。
お金の話って、なんとなく職人の世界では「稼ぐことより腕を磨け」みたいな空気があって、後回しにされがちだと思うんですけど、しっかり稼いで、しっかり守れてこそ、長く現場に立ち続けられるんじゃないかなと僕は思っています。職人PRIDEとしても、そういう実務的な部分でも力になれたらいいなと考えています。

