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「ついでにこれもお願いできる?」その一言、どこまで引き受けてますか。職人の「頼まれごと」の線引きの話

「ついでにこれもお願いできる?」その一言、どこまで引き受けてますか。職人の「頼まれごと」の線引きの話

現場の作業が一通り終わって、お客さんや元請けさんから「あ、ついでにこれもお願いできますか?」って声をかけられる。この「ついでに」、職人なら誰でも一度は経験してると思うんですよね。今日はこの「頼まれごと」との付き合い方について、思うことを書いてみます。

「ついでに」の中身は、実はけっこう重い

「ついでに」っていう言葉って、軽く聞こえるんですけど、内容は全然軽くないことが多いんです。見積もりに入っていない配管の移設だったり、別の部屋のコンセント増設だったり。本人としては「どうせ来てるんだから」くらいの気持ちで言ってるんでしょうけど、職人側からすると、材料を取りに戻るか、工具を追加で出すか、下地を確認し直すか、っていう手間が丸ごと乗っかってくるんです。

自分も駆け出しの頃は、断ったら印象が悪くなるんじゃないかって不安があって、ほとんど全部その場で引き受けてました。でも振り返ると、あれは「サービス」じゃなくて「ただ働き」になってたことが多かったなと思います。善意でやったことが、相手には「無料で当然」として記憶されてしまう。これが一番もったいないパターンなんですよね。

特に多いのが、工事の最後の最後、片付けを始めたタイミングでの一言です。「あ、もう帰るんですか。それならついでに」というやつですね。こちらとしては「今日の作業は終わった」という気持ちの切れ目に差し込まれるので、断りづらさが余計に増すんです。しかも内容を聞いてみると、実は別の業種の範囲だったり、既存の配線・配管の状態を調べ直さないと手を出せないような内容だったりすることも少なくありません。その場の空気だけで判断すると、後になって「思ったより大変だった」と気づくパターンが一番厄介です。

その場で「できる/できない」を即答しない、という選択

経験を積んでから意識するようになったのは、頼まれた瞬間にその場で安請け合いしない、ということです。「ちょっと内容見てから、少し時間もらえますか」と一言添えるだけで、こちらにも考える余地ができます。材料があるか、今日の工程に食い込ませて大丈夫か、追加費用が発生するかどうかを頭の中で整理する時間が持てるんです。

断る、ということじゃないんです。「できますけど、材料の都合で次回になります」とか「今日できる範囲ならここまでです」みたいに、できる範囲を明確に示す。そうすると相手も「ちゃんと考えて答えてくれてる」と感じてくれますし、無理な期待をされにくくなる。即答で「はい大丈夫です」を繰り返していると、いつの間にか「この人は何でもすぐやってくれる人」というキャラが固定されてしまって、後から線を引くのがどんどん難しくなるんですよね。

自分がよくやるのは、「それ単体だと何分くらいで、材料がこれくらい必要になります」と、作業内容をその場で分解して伝えることです。曖昧に「ちょっと大変なんですよね」と言うだけでは、相手には伝わりません。かかる手間を具体的な言葉にして見せることで、相手も「じゃあ今日じゃなくていいです」とか「それなら正式にお願いします」というふうに、自分で判断してくれることが多いんです。判断の材料を渡すこと自体が、線引きの一つの方法だと思っています。

「ついで」が常態化すると、見積もりの意味がなくなる

一人親方や個人事業主としてやっていく上で一番怖いのは、無償の「ついで」仕事が積み重なって、それが当たり前の相場として広まってしまうことだと思うんです。一件一件は小さな手間でも、月に何件も重なれば、それはまるごと利益を削っていることになります。しかも口コミで「あの人は頼めば色々やってくれる」という評判が広がると、次の現場でも最初から「ついでに」が期待された状態で仕事が始まってしまう。

だからこそ、小さな追加作業でも「今回はサービスでやりますが、次からは別途お見積りになります」と一言伝えておくことが大事だと思うんです。相手を責めるような言い方じゃなくて、淡々と事実として伝える。これをやっておくだけで、次からの「ついでに」が随分減ったという話は、職人プライド(職人PRIDE)の仲間からもよく聞きます。

元請けさんが絡む現場だと、もう一段ややこしい話もあります。施主さんから直接頼まれた「ついでに」を、元請けさんに相談せずその場で引き受けてしまうと、後から「それ、うちを通さずにやったんですか」というトラブルになることもあるんです。追加作業が発生しそうなときは、小さなことでも一度元請けさんに一声かけておく。これだけで、自分が悪者になるリスクをかなり減らせます。現場の空気に流されて即断するのが、一番危ないんですよね。

線引きは、関係を悪くするためのものじゃない

ここまで書くと、ちょっとドライに聞こえるかもしれないんですけど、線引きって別に「お客さんを突っぱねる」ための話じゃないんですよね。むしろ逆で、こちらが疲弊せずに気持ちよく仕事を続けられるようにするための、長く続く関係のための工夫だと思うんです。無理をして引き受け続けた結果、後からその不満が態度に出てしまったり、本来の仕事の質が落ちてしまったりしたら、それこそお客さんにとっても損な話になります。

職人プライドのような協力業者同士のつながりの中でも、「あの現場でこういう頼まれごとがあった」「自分はこう対応した」みたいな話を共有できる場があると、一人で判断に迷うことも減っていくんじゃないかなと思います。自分一人の現場だと、どうしても目の前の空気に流されがちですから。

「ついでに」をゼロにする必要はないと思うんです。ちょっとしたことなら気持ちよくやってあげる、それも職人としての人情味だと思います。ただ、それが毎回積み重なって当たり前になってしまう前に、どこかで一度、自分なりの線を決めておく。それだけで、現場での気持ちの余裕がずいぶん変わってくるんじゃないかなと思います。

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