現場に入ると、まず手にはめるものって何になりますか。たぶん多くの職人さんは、ずっと同じ軍手を使い回しているんじゃないかと思うんです。私も若い頃はそうでした。安いし、どこにでも売っているし、何となく「とりあえずこれ」で済ませていたんですね。ただ、最近になってあらためて手袋を見直してみたら、現場ごとに使い分けるだけで一日の疲れ方がかなり変わることに気づきました。今日は、そんな手袋の話をしてみようと思います。
軍手だけで全部こなしてしまう落とし穴
軍手は通気がよくて扱いやすいので、夏場や細かい作業では本当に重宝します。ただ、ネジを締める、配管を持つ、ヤスリをかける、といった作業を全部軍手でやると、知らないうちに指先やてのひらに負担が溜まっていくんですよね。特に繊維が薄くなってくると、握ったときに道具の角が手に食い込んで、夕方にはマメができていた、なんてことも少なくないと思います。
もう一つ気をつけたいのが、軍手が濡れたり油を吸ったりしたときです。水分を含んだ軍手は重くなり、滑りやすくもなります。さらに、油がしみた手袋で配管の内側や端子に触れると、汚れを持ち込んでしまうことにもなりかねません。作業の内容によっては、軍手はあくまで「ベースの一枚」と考えて、必要なときに別の手袋を重ねる、くらいの気持ちでいるとちょうどいいのかなと思います。
革かゴムコーティングか、作業ごとに使い分ける
重い材料を運ぶときや、結束線や金属のバリに触れる作業では、革の手袋が活きてきます。革は手に馴染むまで少し硬いですが、使い込むほどに手の形になってくれて、擦り傷から手を守ってくれます。一方で水には弱いので、濡れる現場や雨の日は使い分けが必要です。ここは手袋の素材ごとの得意不得意を、ざっくりでも頭に入れておくと失敗が減ると思います。
ゴムコーティングの手袋は、掌側に樹脂がコーティングされていて、滑りにくいのが大きな魅力です。ぬめりのある配管やヌルッとした油まわりでも、握りが安定しやすいんですね。逆に、手の甲側まで覆われていると蒸れやすいので、真夏の作業では甲側が網目になっているものを選ぶ人も多いようです。ちなみに、薄いニトリル系の手袋は細かい部品をつまむときにいいと言われていますが、破れやすさもあるので、消耗品として割り切って使うのがおすすめです。
それから、手袋を使うときは「はめたまま何でも触らない」ことも意識したいところです。たとえば、手袋のまま工具を持ち替えたり、そのまま電線の被覆を剥いたりすると、ちょっとした引っかかりでケガにつながることがあります。回転する機械に手袋が巻き込まれるのは、特に怖いポイントです。作業の内容によっては手袋を外したほうが安全な場面もあるので、「外す判断」もセットで持っておくと安心です。
大事なのは、「この作業はこの手袋」と自分のなかで決めておくことです。毎回考えていると、面倒になって結局軍手で済ませてしまうので、現場の段取りのなかに手袋の選択も組み込んでおくと続きやすいと感じています。
冬と夏、季節に合わせた手袋の選び方
冬場は、指先の感覚が鈍くなると作業の精度も落ちますし、ケガのリスクも上がります。防寒の手袋は暖かいぶん厚手になりがちですが、細かい締め付けをする日は、薄手の手袋を一枚重ねるか、指先だけ出せるタイプを用意しておくと助かります。手が冷えて動きが遅くなると、それがそのまま段取りの遅れにつながってしまうんですよね。
夏場は、汗で手袋が濡れて、そのまま乾かずに次の作業に入ってしまうことがあります。替えの手袋を一組、腰袋やバッグに入れておくと、気持ちよく作業を続けられます。ここは暑さの対策とも重なる話なので、水分補給や休憩のタイミングと一緒に考えてみてください。
買い足すときは、サイズと「予備」で考える
手袋は消耗品なので、どこかで必ず買い足すことになります。そのときに意外と見落としがちなのが、サイズです。大きすぎる手袋は指先が余って引っかかりやすく、小さすぎると締め付けで手が疲れてしまいます。できれば実際にはめて、握ったり指を曲げたりしてみてから買うのがいいと思います。通販で買う場合も、手の周りの寸法を測ってから、表記のサイズと照らし合わせてみるとずれが少なくなります。
もう一つは、予備をどれくらい持つかです。一組だけだと、破れたときや濡れたときに作業が止まってしまいますよね。私は現場用の一組に加えて、車に常備の一組を置くようにしてから、急な雨やケガのときにも慌てなくなりました。手袋ひとつで現場が止まるのはもったいないので、「なくなる前提」で数を持っておくのが、結局いちばん経済的なんじゃないかと思っています。
手袋って、買うときはつい値段や見た目で選びがちなんですが、実際に一日はめて過ごしてみると、フィット感や指の動きやすさの差がはっきり出てきます。新しい手袋を試すときは、いきなり大事な現場で使うより、いつもの軽作業で一週間くらい使ってみると、自分に合うかどうかが見えてくると思います。
手袋は地味な道具ですが、手は仕事の要です。軍手一択から一歩だけ踏み出して、現場ごとに「今日はどれにしようか」と考えてみてください。職人PRIDE(プライド)の仲間たちとも、こういう小さな道具の話を気軽に交換できたらいいなと思っています。今日も一日、無理せず、いい手で帰りましょう。

