【無料】新規会員募集中!ご登録はコチラ!

工具の貸し借り、どこまで気軽に頼みますか?職人同士の「道具の融通」の話

工具の貸し借り、どこまで気軽に頼みますか?職人同士の「道具の融通」の話

現場に入ると、「ちょっとそれ貸してもらえます?」という声、よく飛び交いますよね。今日は、職人同士の道具の貸し借りについて、うちが現場で見てきたことを少し書いてみようと思います。

「ちょっと貸して」が気軽に言える現場と、言えない現場

同じ現場でも、道具を貸し借りしている人たちの空気は本当にさまざまです。ある現場では、ボルトを締める前にトルクレンチを回している人が、隣の人の使っていない受け皿や養生テープをすっと差し出している。かと思えば、隣で困っている人がいても、みんな自分の工具箱を抱え込んでいて、声をかけることすら遠慮している。どちらが良い悪いという話ではないんですけど、後者の現場は、やっぱり段取りが詰まりやすいんですよね。

道具を貸すのは、お金のやり取りよりずっと小さい行為です。でも、その小さな行為が「この人になら頼んでいい」という信頼の入り口になることが多い。貸した側も、「あの人は道具を丁寧に返してくれた」と覚えている。こういう積み重ねで、現場の空気は少しずつ変わっていくんだと思うんです。

貸すときに決めておくと揉めにくいこと

一方で、道具の貸し借りでトラブルになるケースも、正直なところ少なくありません。よくあるのは、返ってこない、返ってきたけど刃がこぼれている、電動工具のバッテリーが空っぽで返ってきた、といったパターンです。どれも悪気があってのことではなく、「そのくらいいいだろう」という感覚のズレから来ることが多いように思います。

そこで、うちが個人的にいいなと思っているのは、貸す前に三つだけ決めておくことです。一つ目は「いつまでに返すか」。二つ目は「返すときの状態」、特に刃物や電動工具は、使ったあとにひと拭きして返すかどうか。三つ目は「壊れたときの扱い」です。ここを曖昧にしたまま貸すと、後で気まずくなりがちです。逆に、最初に一言かたちにしておくと、「ああ、そういう約束でしたね」で済むことが多いんですよね。

また、高価な機械や、自分にとって手に馴染んだ工具は、そもそも貸さないと決めている人もいます。これは冷たいことではなくて、自分の道具は自分のコンディションに合わせて育ててきたものだから、という理由があるんだと思います。貸せるもの、貸せないものを自分で線引きしておくのは、すごく大事な感覚だと思います。

借りる側に求められる、ちょっとした気配り

借りる側にも、やっぱり気配りがあると嬉しいですよね。たとえば、借りる前に「今日一日だけ使わせてもらえますか」と用途と時間を伝える。使ったあとは、ネジや端材を工具に付けたままにしない。電動工具なら、バッテリーの残量を見て「充電しておきました」と言えるだけで、貸した側の安心感はぜんぜん違います。

それから、借りっぱなしで自分の道具がまた欲しくなる、というのは避けたいところです。道具を借りてばかりいると、「あいつは自分では持っていないんだな」と見られてしまうこともある。そういう意味で、自分の基本の道具はきちんと揃えておいて、どうしても必要なときだけ借りる、くらいの距離感がちょうどいいんじゃないかと、個人的には思っています。

もう一つ大事なのは、借りたものを壊してしまったときの対応です。壊したこと自体は、正直に言うしかないんですよね。隠してしまうと、その人との関係はそこで止まってしまう。すぐに報告して、どうするかを一緒に決めるほうが、結局は関係を長持ちさせるんだと思います。

それと、返すときの「ありがとう」も意外と効いています。道具は返して終わりではなくて、「助かりました、おかげで段取りが崩れずに済みました」と一言添えるだけで、貸した側も次に貸すハードルがぐっと下がるものです。逆に、何も言わずに戻された道具を見ると、貸した側は「次はどうしようかな」と少し考えてしまうんですよね。お礼は高くつくものではないので、そこはいつでもきちんと伝えたいなと思っています。

道具の融通が、仕事の受け方にもつながる話

少し視野を広げると、道具を融通し合える関係は、仕事の回し合いにもつながっていくと感じています。一人親方の仕事は、どうしても一人で抱え込みがちです。でも、現場で道具を貸し借りするような関係があると、「今回は手が足りないから、あの人に声をかけてみよう」という発想が自然に出てくる。逆に、道具ひとつ頼めない関係だと、人手の相談もなかなか言い出しにくいものです。

そう考えると、道具の貸し借りは単なる便利さの話ではなくて、職人同士の信頼を測る小さな物差しなのかもしれません。もちろん、すべての人と仲良くなる必要はないですし、貸したくない道具は貸さなくていい。ただ、「困ったときに、ちょっと声をかけられる相手がいる」ということは、長く現場で働くうえで、思っている以上に心の支えになるんです。

職人PRIDE(プライド)は、そういう顔の見える関係づくりの場にもなればいいなと思っています。職人プライドのなかで、同じ現場の仲間の話を聞いたり、困りごとを相談したりできると、道具の貸し借りだけでなく、仕事の上でのいろんな助け合いも生まれやすくなるはずです。

今日は道具の貸し借りという、ごく身近な話をしてみました。「貸す」「借りる」のちょっとした一言が、現場の空気を変えることもある。明日の現場で、隣の人に「それ、ちょっと貸してもらえます?」と声をかけてみると、思いがけない会話が始まるかもしれませんね。

目次