「エアコン、ぜんぜん冷えないんだけど」——この一本の電話、地味に効きますよね。段取りして道具積んで向かった先で、結局フィルターが詰まってただけ、なんてこともある。かといって適当に流すとガス漏れを見逃す。今日は、その『冷えない』の切り分けを、順番立ててやる話をしたいと思うんです。
車に乗る前に、電話口で聞いておきたい4つのこと
いきなり出発する前に、電話で3つ4つ確認するだけで、持っていく物も心構えも変わります。聞くのは『いつから冷えないのか』『まったく冷えないのか、少しは冷えるけど弱いのか』『設定は冷房で何度にしていて、風量は自動か』『室内機から風そのものは出ているか』。このあたりで、だいたいの当たりはつきます。
まったく風が出ていないなら、室内機側の電気やファンモーター、あとはリモコンが送風や除湿モードになっているだけ、という線も疑う。風は出てるけどぬるい、去年までは効いてたのに今年から効きが落ちてきた、という話ならガス量や熱交換器の汚れ、室外機まわりの環境あたりが怪しくなります。急にまったく効かなくなった、なら電装品の故障やガスの全抜けも視野に入る。
そして『取り付けた直後から一度も冷えたことがない』と言われたら、これは施工側の問題を正面から疑わないといけません。真空引き不足、ガスの入れ忘れや量のミス、そもそもバルブの開け忘れ。ここを人のせいにせず、落ち着いて自分の仕事を確認できるかどうかが、職人としての信用の分かれ目だと思っています。
現場に着いたら、ゲージを繋ぐ前に見るところ
ゲージを繋ぐのは、実は後半でいいんです。まずは目と手で分かるところから潰していく。フィルターの詰まり、室内機の熱交換器のホコリ、吹き出し口や吸い込み口の前に家具や洗濯物が置かれていないか。フィルターが目詰まりしているだけで能力は平気で2〜3割落ちると言われていますし、清掃しただけで『直った』ことも珍しくありません。
次に室外機まわりです。直射日光がガンガン当たっている、壁との隙間がほとんどなくて吹き出した熱風をまた吸い込んでいる(ショートサーキット)、裏の熱交換器が綿ボコリや落ち葉で目詰まりしている。これも冷房能力をごっそり削ります。設置のときに『ここはちょっと条件が厳しいですよ』と一言伝えられていたかどうかが、後から効いてくるところです。
部屋側の負荷も一応頭に入れておきたい。西日がまともに入る部屋に能力ギリギリの機種が付いていれば、真夏の午後は容量負けして当たり前です。これは機器の故障ではないので、そこはお客さんに正直に説明するしかない。むやみにガスを足しても解決しません。
それでも冷えないなら、圧力と温度と電流で追う
ここでようやくゲージの出番です。冷房で回して、低圧側の圧力、吸い込みと吹き出しの温度差、室外機の運転電流。この3点をセットで見ると、どれか一つだけ見るより判断を外しにくくなります。温度差が7〜8度出ていない、低圧が妙に低い、電流が定格よりはっきり小さい、といった組み合わせが揃うとガス不足の可能性が見えてきます。
ガスは足りていそうなのに冷えない、というときは詰まりや圧縮不良の線です。低圧が下がりすぎて高圧が上がってこない、ストレーナーの前後で温度差が出て霜が付いている、そんなサインが出ていないか見る。ここは無理に自分で決めつけず、メーカーサービスに繋いだほうが結果的に早いこともあります。
新設直後の不調なら、恥ずかしがらずに真空引きからやり直す判断も要ります。中途半端にガスを継ぎ足すより、一度きちんと回収して引き直したほうが、遠回りに見えて結局は早くてきれいに直る。目先の手間を惜しんで曖昧なまま帰ると、また呼ばれます。
そもそも「冷えない」で呼ばれない仕事にするために
再訪問が一番こたえるのは、時間もガソリン代も全部こっちの持ち出しになるからですよね。だからこそ引き渡しの時点で、試運転の数字を残しておく。冷房で回して温度差が何度出たか、圧力がいくつだったか、運転電流がいくつだったか。スマホで写真を撮って一言メモしておくだけで、後からの問い合わせ対応がまるで変わってきます。
それと、設置環境で不利なところは、その場で施主さんや元請けに伝えて記録に残しておく。『室外機のこの位置は夏場きついかもしれません』と一度でも言ってあるかどうかで、後で揉めるかどうかが変わる。言いにくいことを先に言っておくのも、職人の仕事のうちだと思うんです。
職人PRIDE(プライド)の中でも、こういう『効かない』の切り分け手順は人によってクセがあって、他の人のやり方を聞くと毎回勉強になります。ひとりで抱え込まず、同じ悩みを持つ仲間と知恵を出し合えるのが、職人プライドというコミュニティのありがたいところだなと感じています。
『冷えない』の一本は、慌てて動くと空振りしがちです。電話で当たりをつけて、現場では簡単なところから順番に。数字は最後にきっちり取る。この流れが体に入ると、再訪問はぐっと減るはずです。今日も安全に、いってらっしゃい。

