先日、若手の職人さんと現場で少し立ち話をしたんです。「先輩のやり方、正しいのはわかるんですけど、なんでそうするのか教えてもらえると覚えやすいんですよね」って言われて、ハッとしました。自分が教わったときは「見て覚えろ」が当たり前だったので、そのまま同じように教えてしまっていたんですよね。今日はそのあたり、職人同士の技術の伝え方について思うことを書いてみます。
「見て覚えろ」が通じない時代になった、というより通じにくくなった
昔ながらの「背中を見て覚えろ」というやり方、僕自身は嫌いじゃないんです。現場の空気とか、道具を扱う手つきの微妙なニュアンスって、言葉だけじゃ伝わらない部分が確かにあると思うんですよね。ただ、それだけに頼ると、今の若い職人さんにはなかなか届かないというのも事実だと思うんです。
理由を一緒に説明してあげると、飲み込みが全然違うんですよね。「この順番で締めるのは、後から緩んだときに気づきやすくするためだよ」とか「ここで一旦手を止めるのは、次の工程でミスしたときのリカバリーがしやすいからだよ」とか。手順だけじゃなくて、その手順の裏にある理由まで伝えると、応用が利く職人に育っていく気がします。逆に、理由を伝えずに手順だけ叩き込むと、現場の状況が少し変わっただけで対応できなくなってしまうんですよね。
ベテランほど「当たり前」になっていることに気づけない
これは自分への戒めでもあるんですけど、経験を積めば積むほど、無意識にやっていることが増えていくんですよね。工具の持ち替え方、養生のタイミング、お客さんへの一言の挟み方。本人からすると「そんなの当たり前じゃないか」と思うことでも、若手からすると初めて見る動きだったりするんです。
だからこそ、たまには「なんでここでこの道具に持ち替えるんですか?」と若手に聞かれたときに、面倒くさがらずに、ちゃんと言葉にして説明する時間を作ってほしいなと思うんです。自分の頭の中を整理する意味でも、実はベテラン側にとってもいい機会になると思うんですよね。教えることで、自分のやり方のクセや無駄に気づくこともありますし。
教え方が合わない、で終わらせずに伝え方を変えてみる
「今どきの若い子は覚えが悪い」って愚痴、現場でよく耳にします。でも実際に話を聞いてみると、覚えが悪いんじゃなくて、教わり方が自分に合っていないだけ、というケースも結構あるんじゃないかなと思うんです。手を動かしながら覚えるのが得意な人もいれば、先に全体の流れを説明してもらってから動きたいという人もいます。
一人一人に合わせて教え方を変えるのは正直手間がかかります。でも、最初にちょっと時間をかけて相手のタイプを見極めておくと、後々の指導がぐっと楽になるんですよね。「この子には先に理由から話したほうがいい」「この子は現場で一緒にやりながら覚えるタイプだ」とわかれば、無駄な衝突も減っていく気がします。
技術を残すことは、職人プライドというコミュニティの財産にもなる
職人PRIDE(プライド)の仲間たちと話していても、「自分が現場を離れたら、この技術どうなるんだろう」って心配する声、意外と多いんです。一人親方でやっていると、なかなか弟子を育てる余裕なんてないよ、という声もよくわかります。
ただ、たとえ直接の弟子じゃなくても、現場で一緒になった若手にちょっとしたコツを言葉にして伝えるだけでも、それは立派な技術継承だと思うんです。職人PRIDEというコミュニティの中で、そういう小さな伝承が積み重なっていけば、業界全体としても心強いんじゃないかなと。僕自身も、会員さん同士でそういう知恵の交換ができる場を、もっと作っていけたらいいなと思っています。
教え方一つで、若手の育ち方も、現場の空気も変わってくるものだと思います。完璧じゃなくていいので、今日から少しずつ「なんでそうするのか」を言葉にする習慣、一緒に始めてみませんか。

