夏場の繁忙期、エアコンの取り付けで一番あっさり済ませがちなのが、壁に穴を開ける工程だと思うんですよね。下地を確認して、ドリルを当てて、貫通させて、配管を通して、パテを詰めて終わり。数分の作業です。でもこの「穴あけ」、あとからのクレームで一番多いところでもあるんです。今日はそのまわりの話を、あらためて書いてみます。
穴は「水平」じゃなく「外下がり」で開ける
コアドリルやホルソーで穴を開けるとき、まっすぐ水平に開けてしまう人が意外と多いんです。基本は室内側から室外側に向かって、少し下り勾配をつけること。壁の厚みに対して5ミリから10ミリくらい下げると言われています。ほんのわずかですが、これがあるかないかで結果が変わります。
理由はシンプルで、配管まわりの隙間や、年数が経ってパテが痩せてできた隙間から雨水が入ったとき、穴が水平だと水が室内側へ流れ込んでくるからです。外下がりにしておけば、入った水は自然に外へ抜けていきます。壁の中の木部や断熱材を濡らさずに済む、という保険なんですよね。
この勾配、ドリルを構えたときの体の角度でほぼ決まってしまいます。だから最初の刃を壁に当てる瞬間に「気持ち下向き」を意識する。心配な人は小型の水平器をドリルの上に乗せて、狙いを確認してから回し始めるといいと思います。一度貫通させてしまうと角度は直せません。
スリーブを入れるかどうかで10年後が変わる
貫通スリーブ、つまり穴に通す筒ですが、これを入れずにモルタルやサイディングの断面がむき出しのまま配管を通している現場、まだけっこう見かけます。急いでいるときほど省きたくなる部材です。
スリーブを入れておくと、壁の中の柱や断熱材に配管が直接触れなくなります。結露水や運転中の細かい振動で壁材を傷めにくくなるし、将来この配管を入れ替えることになったときも、筒が通っているだけで作業がぜんぜん違います。つばの付いたタイプなら、穴の断面もきれいに隠れます。
特にサイディングの中空になっている部分にそのまま穴を開けると、切り粉が壁の内側に落ちて、そこが湿気を呼ぶことがあります。スリーブとフランジで断面をふさいでおくイメージを持っておくと、仕上がりの安心感が違ってきます。
パテとカバーの「雨仕舞い」、最後のひと手間
パテは室内側と室外側、両方から詰めるのが基本です。外側だけ、あるいは内側だけで済ませると、壁の中に空洞の隙間が残って、そこが虫の通り道になったり、すきま風や雨の吹き込みの原因になったりします。両側から詰めて、中で押し合うくらいがちょうどいいです。
そして外側はパテだけで終わらせないこと。パテは紫外線と熱で数年すると痩せて硬くなり、ひび割れて剥がれてきます。貫通部の化粧カバーをかぶせるか、その上からコーキングを打って蓋をしておくと寿命がまったく変わります。
コーキングを打つときは、配管の上側に三角のヒレを作るように盛るのがコツです。こうしておくと、配管を伝って上から水が垂れてきても、室内側へ入らずに外へ落ちていきます。打ったあとはヘラで軽く撫でて、壁と配管の両方にしっかり密着させておきましょう。ここを指で適当に押さえるだけだと、数年で口が開いてきます。
「開ける前」の確認で事故はほぼ防げる
穴あけのトラブルは、そのほとんどが開ける前の確認で防げます。まず壁の反対側に何があるか。室内なら家具やカーテン、屋外なら給湯器の配管、電気の引き込み線、ガス管が壁沿いを走っていることがあります。下地センサーを当てるのはもちろん、できれば内と外の両方から目視で確かめたいところです。
筋交いや間柱、鉄骨の下地を切ってしまうと、これは構造に関わる話になります。コンセントやサッシの位置から柱のおおよその位置を読んで、そこを外して開ける。少しでも怪しければ、位置をずらす判断も必要です。
あと意外と多いのが、賃貸や分譲マンションで、そもそも穴あけ不可、または管理組合の許可が要るというケース。これは段取りの段階でお客さんに確認しておけば、現場で手が止まることはありません。現地調査のときにひと言聞いておくだけです。
まとめ
穴あけって、慣れるほど「いつもの作業」になって、だんだん雑になりやすい工程なんですよね。でも壁に一度開けた穴は、そう簡単には戻せません。わずかな勾配、両側からのパテ、上からの雨仕舞い。この地味なひと手間が、数年後の「水漏れしてる」「壁が腐ってきた」という電話を減らしてくれます。職人PRIDE(プライド)の会員さんとも、こういう派手さはないけど確実に効く話を、これからも共有していけたらと思っています。

