今日は数字の話です。現場もちゃんとこなして、見積もりも間違ってないはずなのに、なぜか手元のお金がカツカツになる時期ってありませんか。それ、腕が悪いとか経営がヘタとかじゃなくて、この業界のお金の流れの構造そのものに理由があったりするんですよね。
見積もりは合ってるのに、なぜか手元にお金がない
材料はほぼ先払い、でも工事代金の入金は「月末締め翌月末払い」なんてことも普通にある業界です。数十万円分の資材を先に自分の懐から出して、それが戻ってくるのは早くて1ヶ月後、下手すると検収や請求のタイミング次第で2ヶ月後、なんてことも珍しくないと思います。
利益はちゃんと出てるのに、通帳の残高だけ見るとヒヤッとする。これは経営がヘタというより、支払いサイクルそのものが「先出し」を前提にできてしまっているからなんです。仕事が順調に増えれば増えるほど、実は資金繰りはむしろキツくなる、という逆説的なことも起きます。忙しい月ほど発注も増えるので、出ていくお金のペースが、入ってくるお金のペースを追い越してしまうんですよね。
特にありがちなのが、月をまたいで着工から完工まで長引く現場です。着工時に材料をまとめて仕入れて、完工して請求書を出して、そこからさらに支払いサイトの分だけ待つ。この間、その現場のお金は全部「立て替え中」の状態がずっと続くことになります。頭では分かっていても、いざ通帳残高を見ると焦る、という感覚は誰しも経験があるんじゃないでしょうか。
材料費がかさむ現場ほど、資金繰りは重くのしかかる
特にきついのが、材料単価が高い現場と、複数の現場を同時に掛け持ちしてるときです。エアコン本体や配管材、電材なんかをまとめて発注すると、1件で何十万円という出費が先に発生します。それが2現場、3現場と重なると、入金前の持ち出しがどんどん膨らんでいきます。
うちの若い頃を思い出しても、忙しい月ほど財布が薄い、みたいな感覚があった気がします。仕事が取れているのに苦しい、というのは一人親方あるあるなんじゃないかと思うんですよね。急な追加工事や、支払いが遅れがちな元請けに当たったときは、なおさら資金がショートしやすくなります。
もうひとつ見落としがちなのが、繁忙期と閑散期の波です。夏場のエアコン工事や、年度末に集中する現場のように、注文が一気に増える時期は、その分だけ先出しの資金需要も一気に膨らみます。逆に閑散期は入金だけがぽつぽつ続くので、資金繰り表を作らずに感覚だけで回していると、忙しい時期の裏側で実は現金が一番薄くなっている、ということも起こり得ます。
一人親方でもできる、資金繰りの工夫
まず基本ですが、事業用の口座とプライベートの口座は分けたほうがいいです。混ざっていると、いま本当にいくら「事業として」使えるお金があるのか、感覚でしか把握できなくなります。ざっくりでいいので、月ごとに「入ってくる予定」と「出ていく予定」を書き出す簡単な資金繰り表をつけるだけでも、資金ショートの予兆にかなり早く気づけるようになると思います。手書きのノートでも、スマホのメモでも構わないので、まずは「今月末に手元にいくら残るか」を数字で見える化することが第一歩です。
あとは元請けとの関係次第にはなりますが、大きめの現場では着手金や中間金の相談をしてみる価値はあります。すべてを完工後の一括払いにしてもらうより、材料発注の前に一部でも入金してもらえると、立て替えの負担がぐっと軽くなります。資材店との掛け払いをうまく使うのも一つの手です。取引が長い店なら、支払いサイトを少し延ばしてもらえる相談に乗ってくれることもあります。
こういうお金の話は一人で抱え込みがちですが、職人PRIDE(プライド)みたいなコミュニティで同業の人に「どうしてる?」って聞いてみると、机上論だけじゃなく、地味に効く実務的な工夫が見つかったりするのでおすすめです。同じ業界でも支払い条件は現場によってバラバラなので、他の人がどう乗り切っているかを知るだけでも、選択肢の幅は確実に広がります。
借りることを怖がりすぎなくていい、でも線引きは持つ
資金繰りのための一時的な借入は、悪いことじゃないと思っています。日本政策金融公庫の運転資金や、地域の信用金庫の短期融資なんかは、こういう「入金までのつなぎ」のために用意されている制度と言われています。クレジットカードの分割払いだけでその場をしのぐより、目的をきちんと説明して借りたほうが、金利面でも安心な場合が多いはずです。
ただし、借りたお金で赤字を埋め続けるようになったら、それはもう資金繰りの工夫じゃなくて経営自体の見直しサインです。「今月だけのつなぎなのか」「毎月同じことを繰り返しているのか」、ここの線引きだけは自分の中で持っておいたほうがいいと思います。借入を悪者扱いして避け続けた結果、無理な値引きや無理な仕事の詰め込みで乗り切ろうとするほうが、長い目で見ると体にも経営にもこたえるんじゃないかと感じます。
腕のいい職人ほど、お金の流れにも目を配っている人が多い気がします。技術の腕を磨くのと同じくらい、お金の流れを読む力も、長く一人親方を続けていくための立派な技術のひとつなんじゃないかと思うんです。資金繰りって地味な話ですけど、現場に集中し続けるための土台でもあるので、たまには通帳とじっくり向き合う時間、作ってみてください。

