今日はちょっと生々しい話をしようと思うんですけど、「仕事の選び方」についてです。独立したばかりの頃って、来た依頼は基本ぜんぶ受けちゃうと思うんですよね。断ったら次がないんじゃないかって不安があるし、実際そういう時期も必要だと思うんです。でも、ある程度年数を重ねてくると、「全部受ける」がむしろ自分の首を絞めてることに気づく瞬間が来るんじゃないかなと。今日はそのあたりを、職人PRIDE(プライド)の会員の皆さんと一緒に考えてみたいです。
「断る」も仕事のうちだと思えるかどうか
駆け出しの頃に無理して受けた仕事が、あとで一番しんどい記憶として残ってる人、多いんじゃないでしょうか。日程がギリギリで他の現場と被ってるのに強引にねじ込んだり、明らかに単価が合わない仕事を「付き合いだから」で引き受けたり。その場はなんとかなっても、体力を削って、他の現場の質を落として、結局どこかにしわ寄せが行くんですよね。
僕が見てきた中で長く続いてる職人さんって、共通して「断り方」がうまいんです。ただ「無理です」で終わらせるんじゃなくて、「今週は詰まってるので来週なら」とか「その単価だとこの内容は厳しいので、ここを削るか単価を見直せませんか」とか、代案とセットで断る。これができると、元請け側も「困った人」じゃなくて「ちゃんと話ができる人」として見てくれるようになるんです。断ること自体が信頼を削るわけじゃなくて、断り方が雑だと信頼が削れる、というのが実際のところだと思ってます。
あと地味に大事なのが、「なぜ受けられないか」を正直に言うことです。体調のことでも、他の現場との兼ね合いでも、変に隠して曖昧にごまかすより、はっきり理由を伝えたほうが相手も次の段取りを組みやすい。結果的にそれが「またお願いしたい」につながることが多いなと感じます。
単価交渉、毎回同じ金額で通してませんか
これも耳が痛い人がいるかもしれないんですけど、材料費や燃料費が上がってるのに、何年も同じ単価でやり続けてる一人親方さん、けっこう多いと思うんです。元請け側から見直しの話を切り出してくれることって、正直あまり期待できません。黙ってれば黙ってるだけ、昔の単価がそのまま続いていく仕組みになりがちなんですよね。
単価の話を切り出すタイミングとして分かりやすいのは、繁忙期に入る前とか、大きな案件が一段落したタイミングだと言われています。「最近こういうコストが上がってきていて」という具体的な理由とセットで話すと、相手も納得しやすいですし、感情的な交渉にならずに済みます。逆に一番避けたいのは、忙しくてイライラしてる時にとっさに言ってしまうパターンです。感情がのると、たとえ言ってる内容が正しくても「クレーム」として受け取られやすくなってしまうので、タイミングは意識したほうがいいと思います。
それと、単価交渉が苦手な人ほど「全部同じ相手」で完結させようとする傾向があるかもしれません。取引先が一つしかないと、そこで嫌われたら仕事がゼロになるので強く言えなくなる。次の見出しで話しますけど、複数の元請けと付き合っておくことが、実は単価交渉の一番の武器になったりするんです。
元請けを分散させておく、という保険のかけ方
一人親方の働き方で地味にリスクなのが、「メインの元請けが一社しかない」状態だと思うんです。関係が良好なうちはそれで回るんですけど、その元請けの受注が落ち込んだり、担当者が変わったり、最悪付き合いそのものが切れたりすると、収入がいきなりゼロに近くなってしまう。これは体力配分の話とはまた別の、収入源の分散という意味でのリスク管理です。
理想を言えば、メインの元請けが7割、それ以外が3割くらいの比率で、複数のところと細く長く付き合っておくのがいいと言われています。3割の方はそんなに稼働が多くなくても構わなくて、大事なのは「いざという時にすぐ声をかけられる関係」を切らさずに持っておくこと。年に数回でも顔を出す、季節の挨拶をする、そういう小さい積み重ねが、いざという時の保険になります。
職人PRIDEのようなコミュニティに顔を出すこと自体も、実はこの分散に近い効果があると思ってます。普段の現場とは違う場所で「この人こういう仕事もできるんだ」と知ってもらえるだけで、新しい依頼につながることがあるからです。職人プライドの飲み会や勉強会って、営業のためだけの場じゃないですけど、結果的に緩やかなセーフティネットになってる部分はあるんじゃないかなと感じています。
後継ぎ・独立の相談を受けた時に思うこと
最近、独立を考えてる若手から相談を受けることが増えてきました。話を聞いてると、みんな技術的な不安より「仕事が取れるかどうか」の不安のほうが大きいんですよね。腕には自信があるけど、営業経験がゼロだから、独立した瞬間に仕事がなくなるんじゃないかって。
そういう相談に対して僕がいつも言うのは、「独立前に、今の会社以外との接点を少しずつ作っておくといい」ということです。もちろん今の勤め先への義理は大事にしつつですけど、業界の集まりに顔を出したり、資格や講習の場で知り合いを増やしたりしておくと、独立した瞬間の「取引先ゼロ」状態を避けられます。これは後継ぎで事業を引き継ぐ場合も同じで、先代の代からの付き合いだけに頼りきっていると、代替わりのタイミングで急に不安定になりやすいと思うんです。
仕事の取り方って、結局は技術と同じくらい「経験を積んで身につけるもの」なんですよね。最初から上手に断ったり交渉したりできる人なんてほとんどいなくて、何度も気まずい思いをしながら、自分なりのやり方を見つけていくものだと思います。焦らず、でも意識的に、少しずつ自分の仕事の取り方をアップデートしていってもらえたらいいなと思ってます。
今日はちょっと数字寄りの話になりましたけど、結局は「自分の働き方を自分でコントロールする」ための工夫の話なんだと思います。全部受ける働き方から、選んで受ける働き方へ。焦らず、でも着実に、皆さんのペースで進めていってもらえたらうれしいです。

