先日、うちに出入りしてくれてる若い職人さんと世間話してたときに、「社長、一人親方って退職金とかどうなってるんですか」って聞かれて、ちょっと言葉に詰まったんですよね。会社員だったら会社が用意してくれるものが、一人親方には最初から存在しない。当たり前といえば当たり前なんですけど、改めて聞かれると「そういえばうちはどうしてるんだっけ」って考え込んじゃいました。今日はそのあたりを、職人PRIDE(プライド)の仲間にも共有したいなと思って書いてみます。
「退職金がない」という現実、実は見て見ぬふりしがちだと思う
現場が忙しい時期って、正直そんな先のことまで考える余裕がないんですよね。今日の段取り、来週の予定、材料の手配。目の前のことで頭がいっぱいで、10年後20年後の生活費なんて後回しになりがちです。僕自身も独立したての頃は、稼いだ分は次の工具や車の維持費に消えていって、将来のための積み立てなんて発想すらありませんでした。
怖いのは、この「後回し」が何年も続いてしまうことだと思うんです。体を使う仕事だからこそ、ある年齢を境に現場に立てる日数が減っていく。そのときになって初めて「もっと早くから備えておけばよかった」と気づく先輩を、これまで何人も見てきました。若いうちは実感が湧きにくいテーマですが、だからこそ早めに一度、自分の頭で考えておく価値があると思っています。
知り合いの職人さんで、腰を痛めて半年ほど現場に出られなくなった方がいます。幸い蓄えがあったので何とか乗り切れたそうですが、「もし何も準備してなかったらと思うとゾッとした」と話してました。病気やケガはいつ起きるか誰にも分かりません。だからこそ、元気に稼げているうちにこそ、将来の分を少しずつ横に置いておく発想が大事なんだと思います。
小規模企業共済という、知っておいて損はない仕組み
一人親方や個人事業主向けの積立制度として、小規模企業共済というものがあると言われています。毎月の掛金を自分で決めて積み立てておき、廃業したときや一定の年齢に達したときに、まとまったお金を受け取れる仕組みだそうです。会社員の退職金に近いイメージで作られている制度、と説明されることが多いようです。
この制度のポイントは、掛金がそのまま所得控除の対象になると言われている点です。つまり積み立てながら、その年の税負担も抑えられる可能性があるということですね。ただし、加入して数年以内に途中でやめてしまうと、掛けた金額より受け取る金額が少なくなるケースもあるようなので、始めるなら「長く続けられる金額」で無理なく設定するのが大事だと思います。焦って多めに設定して、翌年苦しくなるようなら本末転倒ですから。
あと個人的に面白いなと思ったのが、積み立てたお金を担保にして、事業資金を借りられる貸付制度もあると聞いたことです。例えば急に高額な工具や車両を買い替えないといけなくなったときに、銀行とは別の選択肢として使えるかもしれない。もちろん借りたら返す必要はありますが、「積み立てて終わり」じゃなく、いざというときの備えにもなり得るというのは、知っておく価値があるポイントだと思います。
国民年金だけで大丈夫か、上乗せの選択肢も知っておきたい
もうひとつ気になるのが、老後の年金部分です。一人親方は国民年金に加入している方が多いと思いますが、会社員の厚生年金と比べると受け取れる金額が少なくなる傾向があると言われています。だからこそ、国民年金基金や付加年金といった「上乗せ」の仕組みを知っているかどうかで、将来の安心感がだいぶ変わってくるんじゃないかと感じています。
付加年金は、月々わずかな金額を上乗せして納めるだけで、将来受け取る年金が少し増える仕組みだと聞いたことがあります。国民年金基金の方はもう少し本格的な積立で、選べるプランも複数あるようです。どちらが自分に合うかは家族構成や現在の収入によっても変わってくるはずなので、「これが正解」と一概には言えませんが、選択肢の存在を知っているだけで、いざ考えるときのスタートラインが変わってくると思うんです。
正直、僕もこのあたりは専門家じゃないので細かい数字までは語れませんが、大事なのは「知らなかった」で通り過ぎないことだと思うんです。うちの現場でも、ベテランの職人さんに聞くと「昔、税理士さんに勧められて入った」という話が意外と出てきます。制度の名前だけでも頭の片隅に置いておいて、確定申告のタイミングで税理士さんや商工会に一度相談してみる。それだけでも、何もしないよりずっと前進だと思います。
完璧な計画より、まず情報交換から始めればいいと思う
こういうお金の話って、いきなり「完璧な老後設計をしよう」と構えると、かえって腰が重くなってしまう気がします。うちが職人PRIDEというコミュニティを大事にしている理由のひとつも、実はここにあります。一人で抱え込んで悩むより、同じ立場の職人同士で「うちはこうしてるよ」「それ知らなかった、教えて」と気軽に情報交換できる場があるだけで、だいぶ気持ちが楽になると思うんですよね。
職人プライドの会員さんの中にも、すでに小規模企業共済や国民年金基金を活用している方がいると思います。もし機会があれば、そういう先輩職人に「実際どうですか」と聞いてみるのもいいと思います。制度の細かい話は税理士さんや専門家に確認してもらうとして、まずは「自分にも関係のある話なんだ」と気づくところから始めれば十分じゃないでしょうか。
現場の休憩中や、飲みの席でちょっと出るお金の話って、意外とバカにできないんですよね。「うちはこの共済入ってるよ」「確定申告、こういうやり方で楽になった」みたいな一言が、誰かの背中を押すきっかけになることもあります。うちとしても、そういう情報が自然に行き交うような場を、職人PRIDEを通してこれからも作っていけたらいいなと考えています。
今日は少し真面目なお金の話になりましたが、体が資本の仕事だからこそ、将来の備えも現場の段取りと同じくらい大事にしたいなと、僕自身も改めて感じました。完璧じゃなくていいので、まずは一つだけ、気になった制度について調べてみる。そんな小さな一歩から、一緒に始めていけたらいいなと思っています。

