エアコンの新設工事で、配管つないで真空ポンプ回して、ゲージの針が下がったら「よし、できた」って終わらせてる人、実は結構いるんじゃないかなと思うんですよね。もちろんそれでほとんどの現場は何も起きずに終わります。でも「ほとんど」っていうのが怖いところで、真空引きって実は奥が深い作業なんです。今日はこの真空引きの話を、ちょっと深く掘ってみようと思います。
ゲージの針が下がる=真空になってるわけじゃない
真空ポンプを回して連成計の針が下がっていくのを見てると、どうしても「もう十分引けた」って感じてしまうんですけど、あの針が示してるのはあくまで「その時点の圧力」でしかないんですよね。配管の中に水分や空気が残っていても、ある程度の圧力までは普通に下がっていきます。問題は、その状態のまま冷媒を入れてしまうと、残った水分が凝固点の低い冷媒配管の中で悪さをして、膨張弁のあたりで凍結したり、酸化して配管内部を傷めたりすることがあるという点です。
特に厄介なのが、真夏の現場でとにかく早く終わらせたい時とか、お客さんが「早くつけてほしい」って急いでる時。真空引きの時間を削りたくなる気持ちはすごくわかるんですけど、ここで削った10分、20分が、半年後とか1年後の「効きが悪い」「ガス漏れしてる気がする」っていうクレームにつながることがあるんです。見えない作業だからこそ、ここでの手の抜き方が後からはっきり差になって出てくるんですよね。
複合ゲージだけに頼らない、という選択
連成計だけで判断するんじゃなくて、単位の細かい真空計(マイクロンゲージとか)を併用してる職人さんも多いと思います。連成計は構造上、ある程度の真空度までしか正確に表示できないので、本当にしっかり水分を飛ばせているかどうかは、単位の細かい計器で確認しないと分からない部分があると言われています。もちろん現場の規模や予算によって、毎回そこまでやるかどうかは判断が分かれるところですが、「少なくとも自分の中の基準」として、どのレベルまで真空を引いたら安心できるか、ある程度決めておくのは大事かなと思います。
あと地味に大事なのが、真空引きの時間だけじゃなくて「圧力が戻ってこないか」を確認する工程です。真空ポンプを止めた後、しばらく置いて圧力が上がってこなければ、配管のどこかに漏れがないと判断できる材料になります。この一手間を飛ばして、後から現地で漏れが見つかって出戻りになると、移動時間も含めてかなりの時間を食うことになるので、結局は先に確認しておいた方が早いというパターンが多い気がします。
経験則と、経験則に頼りすぎる危うさ
ベテランの職人さんほど「このくらいの時間引いておけば大丈夫」っていう感覚を持ってると思うんです。それはそれで、何百件もの現場をくぐってきた経験の蓄積だから、決して間違ってはいないと思うんですよね。ただ、配管の長さや口径、継手の数、その日の気温や湿度によって、同じ「感覚」が通用しない現場もあります。特に配管が長い案件とか、湿度が高い時期の工事だと、普段の感覚より多めに時間を見ておいた方が無難だったりします。
若い職人さんに教える立場の人もいると思いますが、「このくらいでいいよ」だけ伝えるんじゃなくて、「なぜそのくらいでいいのか」という理屈の部分まで一緒に伝えてあげると、現場条件が変わった時にも自分で判断できる職人に育っていくんじゃないかなと思います。感覚だけ受け継いでも、理由が分からないと、条件が変わった時に対応できなくなってしまいますから。
見えない作業だからこそ、信頼につながる
真空引きって、お客さんからは絶対に見えない作業なんですよね。配管つなげて、ガス入れて、試運転して「冷えてますね、はい完了です」で終わる。でもその裏でちゃんと時間をかけて水分を飛ばしてるかどうかって、実は長期的な信頼に直結する部分だと思うんです。半年後、1年後に「あの時工事してくれた人、ちゃんとした仕事してくれたな」って思ってもらえるかどうかは、こういう見えないところの積み重ねなんじゃないかなと。
職人PRIDE(プライド)に登録してる職人さんたちと話してても、こういう「見えない部分の基準」の話になると、みんな結構熱く語ってくれるんですよね。職人プライドというコミュニティの中で、こういう現場のこだわりとか判断の基準を共有できる場があるのは、自分としても結構いいなと思ってる部分です。
というわけで、今日は真空引きの話でした。急いでる現場ほど、ここだけはしっかり時間を取ってあげてほしいなと思います。それではまた。

