うちの現場にも、何年か一緒にやってた若い子が「社長、そろそろ自分でやってみたいんです」って言ってくる時期が来るんですよね。毎回ちょっと複雑な気持ちになるんですけど、今日はそのあたりの話を書いてみようと思います。
独立を告げられた時、正直どう感じるか
「寂しい」が半分、「よくやった」が半分、っていうのが正直な感覚なんですよね。何年も一緒に現場回って、怒ったり教えたりしてきた相手がいなくなるのは、戦力的にも痛いし、人としても寂しい。でもそれを素直に出すと相手も気を遣っちゃうので、僕はできるだけ「おお、やるんだ」くらいの軽さで受け止めるようにしてます。
これ、経営者とか先輩職人あるあるだと思うんですけど、独立を告げられた瞬間に表情を曇らせる人、実は結構多いんですよね。本人は悪気なくても、相手は「あの時、師匠は嫌な顔してたな」って何年も覚えてたりします。伝える側の若手も、何日も前から言うタイミングを探って、覚悟を決めて切り出してきてることが多いんです。だからこそ、受け止める側の最初の一言が、その後の関係をかなり左右するんですよね。
逆に、淡々と「じゃあ最後のこの工事だけちゃんと引き継いでくれ」くらいの返し方をすると、相手も肩の力が抜けて、辞める直前まできちんと仕事をしてくれる気がします。感情をぶつけるより、実務の話に早く切り替えてあげるほうが、お互いにとって楽な場合が多いんですよね。
「育てた分、取られた」で終わらせるか、「仲間が増えた」にするか
よくある感情として「せっかく育てたのに、独立されたら損だ」っていうのがあると思うんです。採用して、現場で教えて、一人で任せられるようになったタイミングで出ていかれると、確かに短期的には痛手です。人手は減るし、教え直しの手間もかかる。でもそこで終わらせるか、別の見方をするかで、その後の数年の付き合い方がまったく違ってくるんですよね。
僕が意識してるのは、「自分の下で働く人」から「業界で一緒にやってく仲間」に関係を切り替えることです。独立した後も、忙しい時期に手伝ってもらったり、逆に向こうの手が足りない時に相談されたり。そういう持ちつ持たれつの関係って、師弟のまま引き止めてたら生まれなかったものなんですよね。実際、職人PRIDE(プライド)に登録してる協力業者さんの中にも、元々うちで修業して独立していった子が何人かいます。顔見知りだから仕事の頼みやすさも段違いですし、向こうも変な気負いなく相談してきてくれます。
短期的な損得だけで考えると、独立は「戦力のマイナス」でしかないんですけど、長い目で見たら「業界に知り合いが増える」っていうプラスでもあるんですよね。そこに気づけるかどうかで、送り出した後の態度がかなり変わると思います。
送り出す側が準備しておくといいこと
いつか独立する前提で若手と付き合うなら、技術だけじゃなくて「仕事をどう取るか」「見積りはどう組むか」みたいな、現場の外側の知識も少しずつ渡しておくのがいいと思うんです。技術だけ教えて送り出すと、独立してから見積りや価格設定で苦労して、結局安い仕事を取りすぎて体を壊すパターンをよく見ます。僕自身も独立したばかりの頃、相場感がわからなくて安請けしすぎた時期があったので、これは身をもって言えることです。
あと、独立した後の「居場所」を一つくらい用意してあげられると、その後の定着率がかなり違う気がします。元の師匠の現場に顔を出せる関係でもいいし、職人プライドみたいなコミュニティに顔を出せる場でもいい。いきなり一人で全部やらせるんじゃなくて、困った時に戻れる場所があるかどうかが、独立後の数年を左右するんですよね。独立直後って、仕事の有無よりも「相談できる相手がいない」ことのほうがメンタルにきついという話を、何人からも聞いています。
道具の揃え方とか確定申告のやり方みたいな、地味だけど地味に大事なことも、辞める前にさらっと話しておくと助かるみたいです。本人が聞いてこなくても、「困ったら電話していいぞ」の一言があるだけで、だいぶ安心感が違うようです。
うちの場合は、独立する子には最後の数ヶ月、意識的に見積りを一緒に組ませたり、元請けとのやり取りの場に同席させたりしています。普段の作業だけ教えて送り出すより、出ていく直前の数ヶ月をどう使うかで、その後の立ち上がりの速さがかなり変わる印象があります。
見送った後の関係が、結局は業界の厚みになる
独立していった若い子が、数年後に別の現場でまた一緒になったり、人手が足りない時に声をかけ合ったりする。そういう緩やかな繋がりが、結局はこの業界全体の厚みになっていくんだと思うんです。一人で抱え込まず、送り出した相手とも、職人PRIDEというコミュニティの中でも、お互い顔の見える関係を保っておく。そうすると、いざという時に頼れる人が増えていくんですよね。
うちから出ていった子たちが、どこかで元気にやってるっていう話を聞くと、正直ちょっと誇らしい気持ちになります。育てた側も育てられた側も、独立を「卒業」じゃなくて「次のステージへの一歩」として見られる関係が、もっと業界に広がったらいいなと思っています。師弟関係って一度終わったら縁が切れるものじゃなくて、形を変えて続いていくものなんだと、最近になってようやく実感できるようになりました。
若い子を送り出す立場になった時は、ぜひ少し長い目で関係を見てみてください。それだけで、その後の付き合い方がずいぶん楽になると思います。

