会社員だった頃は、給料から勝手に天引きされて、定年になれば退職金がドンと出る。そういうものだと思ってたんですよね。でも一人親方や個人事業主になると、その「勝手に積み立ててくれる仕組み」が一切ないんです。現場で稼いだお金は全部自分の手元に残るけど、逆に言えば、自分で意識的に積み立てないと、老後のための備えはゼロのまま歳を重ねることになる。今日はそのあたりの話を、職人プライド(職人PRIDE)の皆さんに向けて書いてみようと思います。
退職金がないという事実に、意外と気づかないまま働いている
現場が忙しいと、目の前の仕事と入金のことで頭がいっぱいになって、10年後20年後のことなんて考える余裕がない。これは自然なことだと思うんです。でも、ふと同級生の会社員が「退職金で家のローンを完済した」なんて話を聞いた瞬間に、ハッとする職人さんは多いんじゃないでしょうか。
一人親方には厚生年金もないし、退職金制度もない。国民年金だけだと、受け取れる額は会社員の厚生年金に比べてかなり少なくなると言われています。体が動くうちは稼げても、腰や膝を痛めて現場に立てなくなったとき、収入がガクッと落ちる。そこで慌てて「何か備えを」と思っても、積み立てには時間がかかるので、早く始めた者勝ちという側面があります。
小規模企業共済という選択肢を知っているかどうかで差がつく
一人親方や個人事業主向けの積み立て制度として、小規模企業共済というものがあります。毎月一定額を積み立てて、廃業したり引退したりするときにまとまった金額を受け取れる、いわば「自分でつくる退職金」のような仕組みです。掛金は月々1000円から選べて、経営状況に応じて増減させることもできると言われています。
この制度のポイントは、掛金がそのまま所得控除の対象になるという点です。つまり積み立てながら、同時に確定申告での節税にもつながる。稼いだお金をただ貯金するのと、この制度を使って積み立てるのとでは、同じ金額を積んでも手元に残る実質的な価値が変わってくるんですよね。もちろん途中で解約すると元本割れするケースもあるので、そこは面談や窓口でしっかり確認してから始めるべきだと思います。
「いくら積むか」より「いつ始めるか」の方が実は重要
職人仲間と話していると「余裕ができたら始める」という人が結構多いんです。気持ちはわかります。でも積み立てというのは、月々の金額よりも、始めた時期の方が最終的な差に効いてくることが多い。月1万円を30歳から始めるのと、45歳から始めるのとでは、積み立てられる年数が全然違いますから。
だからといって、無理な金額を積み立てて、肝心の工具代や生活費が苦しくなっては本末転倒です。まずは月々5000円とか1万円とか、続けられる金額で始めてみる。仕事が乗ってきて余裕が出てきたら、そのタイミングで増額すればいい。大事なのは「完璧な計画を立ててから始める」ことではなく、「小さくてもいいから今日から始める」ことなんじゃないかと思います。
現場の稼ぎと将来の安心を、どう両立させるか
正直なところ、現場で忙しく動いている職人さんにとって、老後の積み立てなんて優先順位は低くなりがちです。目の前の材料費、工具代、家族の生活費。そっちの方がずっとリアルですからね。でも体が資本の仕事だからこそ、働けなくなったときの備えを後回しにしすぎるのは怖いなと、経営者としては感じています。
職人プライドというコミュニティの中でも、こういうお金の話は現場ではなかなか出てこないテーマだと思うんです。だからこそ、こういう場で少しずつ共有していけたらと思っています。積み立ての制度は色々あるので、税理士さんや共済の窓口に相談しながら、自分に合った形を見つけてもらえたら嬉しいです。
体を張って稼いだお金だからこそ、未来の自分にもちゃんと分けてあげる。今日はそんな話でした。また現場で会いましょう。

