配管をカットしたあと、切り口をそのまま次の工程に進んでいませんか。今日は派手さはないけれど、やるかやらないかで仕上がりも安全も変わる「リーマ掛け」の話をしてみたいと思います。
切り口の内側のバリ、見た目では分からないんです
パイプカッターで銅管を切ると、切り口の内側に小さなめくれ、いわゆるバリが残ります。外から見ればきれいに切れているように見えても、内側に細く突き出たバリがあると、流れてくる冷媒の通り道を少しずつ狭めてしまいます。
正直に言うと、若い頃の私も「切れてりゃ繋がるだろう」と思っていた時期がありました。でもフレアを作ってみると、バリが残ったままの管は先端が割れやすかったり、ナットを締めたときに当たりがずれたりするんですよね。手応えが違うので、やっぱり自分の手が一番正直だと思います。
特にパイプカッターは、刃を回して管を締め込んでいく構造上、内側へ材料を押し込むような力がかかります。だから切り口は、思っている以上に内径が狭くなっていることが多いんです。ここをそのままにして次の作業に入ると、後から「なんとなく流れが悪い」「フレアがきれいに出ない」という形で返ってくることがあります。
リーマは「面取り」、力を入れすぎないのがコツ
リーマは、管の内側と外側の角を落として、なめらかにするための工具です。パイプカッターに付いているタイプでも、単独で使うリーマでも構いません。大事なのは、ぐっと押し込むのではなく、刃を軽く当てて数回だけ回すこと。力任せにやると肉を削りすぎて、管の厚みが部分的に薄くなってしまいます。
作業のときは、管の端を少し下に向けて切りくずが自然に落ちるようにすると楽です。内側に細かい切りくずが残ると、そのまま配管の中に入り込んで、後々の詰まりの原因にもなりかねません。最後は乾いたウエスで中をぬぐって、切りくずが残っていないか確認する習慣をつけておくと安心です。
あと、切り口が管の軸に対してきちんと直角になっているかも、この段階で見ておきたいところです。斜めに切れていると、フレアを作るときに偏りが出やすくなります。ちょっと角度がずれているだけでも、締め付けたときの当たりが変わるので、目線を低くして一度見てみてください。
見た目より「指で触って」判断する
私がおすすめしているのは、切った管の端を指先でなぞってみることです。バリがあると、指の腹にザラッとした引っかかりを感じます。手袋をしたままだとこの感覚が分かりにくいので、ここだけは一度手袋を外して確かめてもいいと思います。
若手に教えるときも、この感覚を一番大事にしています。「ちゃんと見ろ」と言うより「ちゃんと触ってみろ」と言ったほうが、なぜか身につくんですよね。道具の名前や手順は現場ごとに違っていても、切り口を触って確かめるというひと手間は、どこでも通用する基本だと思います。
職人PRIDE(プライド)の仲間と話していても、こうした細かい仕上げを大事にしている人の仕事は、周りから信頼されていることが多いと感じます。派手な技術じゃなくても、「あの人の配管はきれいだ」と言われる理由は、案外こういう地味なところに詰まっているものです。
後で戻る手間を考えると、数十秒のひと手間は安い
配管の詰まりや、フレアの割れ、冷媒の漏れなどのトラブルの中には、切り口の処理が遠因になっていたという話も少なくないと言われています。もちろん原因はそれだけとは限りませんが、「あのとき一回触っていれば」と悔しい思いをした経験は、多くの職人が持っているのではないでしょうか。
バリ取りは、慣れてしまえば数十秒で終わる作業です。段取りが詰まった日ほど省きたくなる工程ですが、後から手直しに戻るほうが、移動時間も材料も、お客さんとの信頼も失いかねません。忙しい日にこそ、このひと手間を「時間の無駄」ではなく「保険」だと考えてみてください。
今日の現場で管を切ったら、まず切り口を一度指でなぞってみる。それだけで、次の工程に入るときの安心感がずいぶん変わると思います。道具を新しくするよりも、まずは今ある道具の使い方を見直すところから始めてみませんか。
道具は高いものを買えば解決する、というわけじゃないと思うんです。切り口を大事にする気持ちが、結局いちばん長持ちする仕事につながるはずです。今日も安全に、いい仕事をしていきましょう。

